Case.5 タングステンルアー・材料の開発
技術開発部 開発課 森
背景・課題
タングステン材料は通常、ランプや医療分野といった産業分野で使われることが圧倒的に多いです。しかし、趣味やアミューズメントなどの一般消費者向けの素材としても魅力的な材料です。
特にフィッシングの世界では、タングステンの高比重特性や、環境への毒性の低さなどから注目されており、特にウエイト製品では幅広く利用されています。 岳石電気でも、一般の釣具メーカーでは発売していないようなニッチなターゲットを対象に、タングステン及びタングステン重合金(ヘビーアロイ)のルアーやウエイトを開発・製造しています。オリジナルブランドとして「ヘビーソース」を立ち上げています。(写真1 ヘビーソース製品)
写真1 ヘビーソース製品
設計・条件出し・テスト・金型作成
岳石電気では、自社オリジナルブランドヘビーソース(http://www.heavysource.com/)向け製品と他メーカー様OEM製造の両方を行っています。自社製品にしても、他社向け製品にしても、設計~量産製造までワンストップで行えることを特徴としています。製品形状の設計は3DCADでおこない(写真2 タングステンスプーン CORDE)(写真3 鯛ラバ)、製法条件出しをおこなって、プロトタイプ(写真4 プロトタイプスプーン)を作成しています。それをフィールドテストして(写真5 フィールドテスト サクラマス)(写真6 フィールドテスト メバル)問題点をフィードバックし、設計が確定してから金型を作成しています(写真7 CORDE 金型設計)(写真8 金型) これらの製造プロセスは、産業用であれ、一般向けの釣具であれ、まったく同じものです。
写真2
タングステンスプーン CORDE
写真3
鯛ラバ
写真4
プロトタイプスプーン
写真5
フィールドテスト サクラマス
写真6
フィールドテスト メバル
写真7
CORDE 金型設計
写真8
金型
タングステンスプーン・ジグ・鯛ラバ
ヘビーソースオリジナルの製品にタングステンのスプーンがあります。これには2種類の比重、「高比重18(TYPE-H)」と「中比重14(TYPE-M)」がラインナップされています。
どちらも基本的にはタングステン合金ですが、中比重はヘビーソースオリジナルの材料を自社でゼロから開発しました。高比重は利点もあるが、欠点もある。その点、鉛よりは重く、一般的なヘビーアロイよりは軽い、といった中比重の特性は、非常に幅広いシーンで使いやすさを発揮するバランスの取れた製品となっています。
また特殊なスプーンとして、ニッケルとタングステン合金の2種類の異素材・異比重を一体化させたもの
があります。極端に異なる比重を一体化させることによって、これまでになかった動きを演出することが出来るものです。 そのほかにもジグ、鯛ラバといった、製品も開発していますが、いずれにしても、岳石電気で手がけるのは、一般にあまり存在しない、「他に作るところが無い」「遊び心満載」なものに特化しています。
有磁性ウエイト
OEMの製品としては、ルアー内部の移動式ウエイトボールや、固定ウエイトがあります。また移動式ウエイトボールには、ルアーの泳ぎをキビキビしたものにするために、リトリーブ時には、前方などに設置されたマグネットに固着することが求められる事があります。あまりに強磁性では、キャスト時にマグネットから離脱しづらく、弱磁性過ぎれば、泳ぎ出しにマグネットに固着しにくくなってしまいます。その辺を適宜テストを行いながらレシピや配合比率を検討し、製造していくことになります。
ウエイト製品については、量とコストの点で、国内プロトタイプやテストを経て、最終的には海外の生産拠点で製造することが多く、あらゆるお客様の要望にコスト面でも応えるように努力しています(参考:コストダウン・海外生産)。
写真9 タングステンウエイトボール
W74シート
樹脂タングステンシートについては、タングステンフレキシブルシートの開発をご覧ください。