ソリューション事例

Case.3 導電性を有するセラミックと金属の焼結体の開発

技術開発部 開発課 木村

背景・課題

ランプは通常、石英などのガラスバルブによって封じられています。バルブ内部は不純物が入らないように真空引きされた後に、各種フィラーガスが入れられ、熱によりガラスを溶着させて、電極やフィラメント及び封入物を封じます。このガラスの代わりに、多結晶アルミナ(PCA)を発光管とした、セラミックメタルハライドランプ、というランプがあります。(写真1 セラミックメタルハライドランプ)このランプはアルミナセラミックをバルブとしてる為、石英ガラスより高温にも耐えることが可能。よって放電電極をより高温下で使用できるので、通常の石英バルブメタルハライドランプにくらべ1.5倍程度に効率アップが可能です。
しかし、アルミナセラミックはガラスのように溶着方式による封止が不可能な為、その代わりに、フリット(粉)ガラスを融解させ、それを、電極とバルブの僅かな隙間(0.1mmなど)に流し込み封じる方法が一般に取られます。 その為、封じ部の電極材料には、導電性、耐高温性、耐ハロゲン性が求められる上に、フリットガラスとアルミナバルブと電極の間に熱膨張係数の適当な傾斜関係になるような性能も求められます。この熱膨張係数の差が、ランプ点灯中のクラック(割れ)の原因になるからです。

開発の概要

アルミナセラミックを用いることが可能であれば、バルブとの熱膨張係数に差はありません。しかし、導電性が失われてしまい電極になりません。金属Moやタングステンでは、導電性はありますが、熱膨張係数に差がありすぎて、封止部にクラックが入り、スローリークが発生し結果的に短寿命等の問題に繋がってしまいます。よってこれらの両方の良い所取りをする為に、アルミナセラミックとモリブデン等の金属材料を混合焼結した材料を開発し、問題を解決することになりました。

開発の詳細

アルミナ粉とMo粉、(又はW粉)を適宜求められる特性(熱膨張係数や導電性能など)を考慮し、源材料選定、混合~焼結条件を最適化し、導電性素材を開発・製造しました。

また、この素材は、後にタングステンやモリブデン、ニオブといった材料と接合させて利用する為、その際の溶接性や折れ強度等も十分に考慮し、製造条件出しを行いました。最終的には、融解フリットガラスが僅かな隙間(キャピラリー)を毛細管現象により流れ込む際に影響する、開発材料の表面粗度なども考慮し、センタレス研磨などを行って仕上げています。(写真2 表面拡大)(写真3 サーメット外観)(図1 熱膨張係数)

写真2 サーメット表面拡大

写真3 サーメット外観

図1 熱膨張係数(モリブデン、アルミナ、当社製サーメット)

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