Case.4 エミッター含浸多孔質W電極の製造
技術開発部 開発課 森
背景・課題
製造装置としての特殊UVランプや、ソーラーシミュレーションなどの分析用ランプなど、非常に低いエネルギーで放電し、きわめて安定した性能を維持することが求められるランプが存在しています。(写真1 産業用特殊放電灯)
それらには、通常の純タングステン、高純度タングステンでは目的が果たせず、トリウムタングステンでも特性的に十分とはいえません。それらを解決する為、オーダーメイド型の特殊電極を開発する必要があります。
開発の概要
低エネルギーで放電させる為には、電極には低い仕事関数をもった素材でなければなりません。それにはやはり酸化物を添加して焼結して製造する方法がありますが(トリウムタングステン代替材料の開発)、酸化物が多くなると、タングステンとの焼結温度に差がでるため、十分な焼結条件を満たせないことがあります。
その場合は、タングステン単体で十分な焼結条件をクリアし、単体での物理特性を高度に維持し、その後、その焼結タングステンに、易放電性を付加することが出来る、別途製造したエミッター類を含浸させ、最終的に、両者が物理的、化学的に結合した状態に仕上げていく方式を取ります。
写真2
焼結直後のポーラスタングステン外観
写真3
ポーラスタングステン
「空孔サイズ大での条件品」
写真4
エミッタ含浸後のポーラスタングステン
開発の詳細
エミッター材の内容や、製法、また、それを含浸させるベースとなる多孔質タングステン(ポーラスタングステン)の製法などには特に標準的なレシピ、マニュアルは存在しません。最終用途・性能を達成する為に最適な条件を探し出しながら開発していく必要があります。
それを実現する為には、数百・数千といったパターンを繰り返し実験し、作り上げていくことになるのです。このような地道なトライアンドエラーを小回りを利かせて行うというのが、岳石電気の開発に取り組む姿勢であり特徴であると言えます。