機械加工に頼らずセラミックス機能性を持たせるには?
開発を担当している黒田です。
本日は”表面処理”のお話をさせていただこうかと思います。皆さん、表面処理と聞いてどんなものをご想像されますでしょうか? 身近なところでは”塗装”でしょうか?母材に対してその表面に意匠性を持たせるために色を塗る、あるいは傷つき防止対策をするなどは表面処理の基本的な使い方ですね。また、母材だけでは出せない新たな性能を発揮させるために表面だけを改質させる、たとえばペットボトルの酸素透過防止膜やポテトチップスの袋の銀色コーティングは透過光防止膜として標準化されています。
表面処理のいいところは”表面だけ母材と全く異なる性能を持たせられること”だと思っています。同じ形状をしていても性能が異なる製品を作ることができるのはこの処理一番の特徴です。
昨今タングステンに関しても、他の金属材料と同じ潮流に乗れるようになってきまして、弊社でも塗装や機能性膜を付与するご依頼が出てきています。既に量産化されている製品としてはたとえばこれ。
弊社営業の任の方もブログに書いているHEAVY SOURCEのタングステンルアーは一般民生向け製品としては、時間と手間を掛けた製品で、焼結だけでなく、意匠性と疑似餌としての機能性を持たせる為の塗装も弊社で行っています。
また、森が先般ご連絡致しましたコーティングは機能性を持った表面処理としてお客様から非常に期待されている案件でございます。これらの他にも弊社ではセラミックスコーティングの試作を行っています。加工例をご紹介いたしますのでご覧下さいませ。
これはタングステンの電極にアルミナをコーティングしたものになります。先端の白い部分アルミナになりますが、コーティングされている部分は絶縁膜となっておりアルミナとして機能いたします。
一般的に、ヒーター等の利用且つ、高温下及び酸化雰囲気などの状況では、カンタル線やパイロマックス線と言うものが市販されています。基本的には鉄クロム・ニクロム線にアルミナやガラス系の材料が入っているもので、加熱すると表面に析出し絶縁性や酸化防止膜ができると言うものです。高グレード品で約1700℃程度までの使用条件になろうかと思います。弊社でもこれらの材料を加工しヒーターにすることもあります。
上記写真のコーティング製品はタングステンに皮膜を施しているので、ニクロム線よりは高温下での使用に耐えうると思います。また、タングステンは高温下では酸化に弱いですが、その部分をアルミナコーティングすることにより機能補完できます。 形状的にも、これを実際のアルミナから削り出したらそれこそ大変ではないでしょうか?コーティングであればマシニングはおろか旋盤さえも必要がなくなります。セラミックスですので焼結等が必要になりますから、それなりに母材の耐熱性は選びますが、セラミックスよりも加工しやすい材料で形作った後コーティングを施工するといった方法は今後弊社がお客様にご提案していく技術のひとつになると考えています。
コーティングゆえのエッジの甘さや膜厚分布等まだ検討していく必要がある部分は色々有りますが、得てしてこういうものは
『より多くの実戦経験を経ることで洗練された材料になっていく』
ものだと感じます。特許や教科書に書いてあることは正しくとも完全ではないことも多く、自動車で言えばアクセルとブレーキの場所だけ書いてあるようなものです。お客様とのヒアリングの中で必要な条件を聴取してそれを最適化していくことの反復によって技術レベルの向上や、製品の質感の向上に繋がるように思います。
『セラミックスの機械加工をご検討される、その前に。』
まずは表面処理をひとつの手段としてご検討頂き、是非弊社にご相談いただければ幸いです。
皆様からの宿題、お待ちしております。